2018年4月11日水曜日

特別抗告阻止に向けての要請書


特別抗告阻止に向けての要請書

平成30年3月19日

袴田巖死刑囚救援議員連盟 御中

               袴田事件弁護団 
                  団長 西 嶋 勝 彦

第1 要請の趣旨
 法務大臣は,個々の事件について,検事総長を指揮する権限を有する(検察庁法14条)ことから,本件について,東京高等裁判所第8刑事部が即時抗告を棄却したときには,川陽子法務大臣が,検事総長に対して,特別抗告をしないように指示ないし指導をされるよう,要請していただきたい。
 
第2 要請の理由
1 袴田氏の高齢と審理の長期化
(1)袴田巌氏は,本年3月10日で82歳となった。高齢であり,健康状態も,糖尿病等をかかえるなど万全でない。
(2)平成26年3月27日に静岡地裁が再審開始決定をしたが,検察官の即時抗告により東京高裁に係属してすでに4年が経過しようとしており(審理は終了し,現在,決定を待っている),審理が著しく長期化したこと(福岡高裁で本年3月12日に決定があった大崎事件は,即時抗告審は9ヶ月で棄却決定がなされた)
2 袴田巌氏が,人としての普通の生活を取り戻すためには,無罪判決が不可欠である
(1)袴田氏は,現在も,「こがね味噌事件」(=袴田事件)はなかった,自分は,○○の王だなどという妄想の世界にいる。これは,釈放前とまったく同じである(拘置中と同じように,妄想の世界の日記を書いている)。
(2)妄想のため,釈放後もやりたいことをやったり,自由に人との関係をつくったりすることもできない(浜松の街を歩き回るのも,最高権力者としての仕事である)
(3)妄想の世界に入っているのは,死刑執行の恐怖があるから
(4)妄想の世界から抜け出るためには,無罪判決を受ける(死刑執行がなくなる)ことが絶対に必要
3 本件は,死刑再審という重大事件である上,再審開始決定の段階で釈放された唯一の事件である
(1)静岡地裁の再審開始決定は,警察による証拠ねつ造の可能性をはっきりと認めた
(2)そのため,他の死刑再審で無罪となった4事件(免田,財田川,松山,島田)と異なり,唯一,再審開始決定とともに死刑の執行停止のみならず拘置の執行停止を認めたことで釈放された
(3)検察官は,公益の代表者とされており(検察庁法4条),本件で,袴田氏の救済のため特別抗告をしないことこそ正義であり公益にかなう。
4 大崎事件は,特別抗告をする方針と報道されている
(1)大崎事件の請求人原口アヤ子氏は,すでに90歳であるにもかかわらず,検察庁は,特別抗告をする方針であると報道されている。
(2)本件の第一次再審の際の特別抗告は,最高裁の決定まで3年7ヶ月を要した。
5 検察庁法14条は,法務大臣が,個々の事件について,検事総長を指揮する権限を有するとされている。したがって,法務大臣は,「指揮」とまでいかなくても,検事総長に特別抗告をしないよう「指示」ないし「指導」をすることは可能である。

※検察庁法第14条 法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。

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