2018年7月25日水曜日

39年前の無念さは、大島不当決定に重なる


「これはもう裁判ではありません」
以下の文章は袴田さんが39年前、高裁横川裁判長を「無法者、殺屋」と弾劾し、無念の思いを表明したものです。この文章は、今回の大島不当決定にそのまま当てはめられるものと思います。 無実の「死刑囚」連絡会議 会報4号(1980年4月20日発行)より

全ての皆様方に訴えます。私は、無実の死刑囚・袴田巖と申します。
一九六六年、昭和四一年六月に清水市横砂で重役一家四人殺し放火事件が起こりました。私は、その当時、本件の被害者の経営する、こがね味噌会社、工場の独身寮で生活して居りました。思えば不当逮捕から深々十四年目に突入しています。
警察官の物的証拠偽造という悪逆な行為により、私は逮捕されたのであります。そして、連日連夜の拷問的取調べと、卑劣な術策を用いて、完全な病人である私を遂には悪質な騙しうちにかけて調書を一通でっち上げたのであります。取調官等は、私が病気であり、暴力の攻めに抵抗できないことをよいことに生命に直接関わる暴行を駆使してきました。そしてうむをいわさず、次々と推測による架空調書を捻出したのであります。然し、右の物証偽造並びに調書のデッチ上げという根元的未曾有なる違法行為は、隠しようもなくなりました。即ち、本件発生一年二ヶ月余を経て出現した新証拠血染の衣類の存在によって捜査陣の不正は余すところなく世間一般に暴露されたのであります。ところが、一審静岡地裁石見裁判長は、私の無罪証明として不同かつ明白である証拠物の存在価値を頬被りすることによって。一九六八年九月十一日に私に対し暴虐にも死刑を科したのであります。このような司法権力の出世主義が醸す無責任性と不正義さを断固国民各位に訴えるものであります。
 本件に於いては右のような不当行為が警察・検察・裁判所一体の権力犯罪として如何にも露骨に示されました。民衆が安易に裁判官を信ずることは間違いであります。
 私を無罪にするのが正当であった二審における争点は、新証拠の血染めの衣類五点が被告人に結びつくものであるか否かでありました。高裁で行われた三回の装着実験が顕著に関係者に示したものは一致して、新証拠は、全く被告人には無縁であったという事実でした。
 第一に、血染めの白半袖シャツ右肩に二つの損傷に相応する傷跡は、被告人に全く存在していないこと。
 第二に、血染めのズボンが小さ過ぎ、被告人にこれを穿くことは到底不可能であるばかりか上にあげることすらできないのです。もはや無罪は決定的です。ところが、二審横川裁判長は、なんら科学的根拠もないまま何とウエスト部分が十三センチも縮んだことにデッチ上げてしまい、本件当時は、被告人に穿けたと空惚けたのであります。そして何よりも許されないことは、弁護人が指摘した問題点に理由さえ示さず一刀両断にするという暴挙に出たのであります。これこそ彼、横川敏雄の無法者としての素顔を象徴していると思います。とにかく彼の判決は、それだけでは有罪の証拠となり得ない、幾つかの事実らしいものを並べたて、このうちの有罪の都合のよい解釈だけをひっぱりだしたのです。然し、これらの事実は客観的に見るなら、誰の眼にも無罪という結論を導き出す有力かつ決定的武器なのであります。本件横川敏雄のように初めに有罪という歪曲された結論があって、そのために都合のよい解釈を集めて廻すというのでは、これはもう裁判でありません。右横川は、私から公正な裁判をうける権利さえ奪ってしまったのです。
 横川敏雄は、既に退官して居りません。然し、彼が出世したいが為に成した本件に対する謂れなき殺人行為は今だ生きております。私は、その被害者です。彼をのさばらせておくのは無念でなりません。社会正義にもそれは反します。この意味で、心ある人民各位に訴えます。殺屋、横川敏雄を徹底的に弾劾して下さい。彼は卑劣極まる官僚でした。そして本件に対し真実を無視し、無闇に日帝専制に同調しファシズムによる官僚同士の庇い合いという反社会的な心証の悪用の下で司法権を濫用し、無実明らかな民衆に対し死刑を科したのであります。この判決内容は、誰が検討しても法令に違反すると同時に、同僚達の非を更なるデッチ上げをもって庇おうと意図した官僚の陰謀であり、それらを恥知らずにもむき出しにした極反動有罪判決であることを断言したものである。
 右の如く国民総てをないがしろにした明らかに誤判は、当然、国民の攻撃によって微塵に粉砕されなければならないと存じます。
 皆様、本件裁判闘争の決戦は、控訴棄却以来四年半ばに達しました。しかし、最高裁の動きは今だございません。この状況は、ある意味から見るならば、本件が勝利への途に乗ったと言えましょう。いずれにしましても、どうか他のフレームアップ事件の御支援も宜しくお願い致します。
 正に係争中の最高裁において、下、中(地裁・高裁)司法権の鮮明な職権濫用を厳しく糾弾し、更に、司法権の無責任さを暴かんが為、不屈の闘志と決意も燃えたぎらせております。不束な私ではございますが、皆様方の御指導御支援を東拘深部より頭を低くしてお待ちしております。さて、とみに反動の波高い最高裁に於いて公正、平明が必ずや守られるという保証はない。この意味で、冤罪者が裁判の正義を託せるものがあるとしたら。それは唯一皆様であります。どうか皆様方の厳しい監視によって司法権の混迷に楔を打ち、全ての裁判官に公正と正義を堅持させて下さい。
 心ある貴方へ
   一九七九・十一・八
                           袴田 巖
                         (東京拘置所)

2018年7月11日水曜日

オウム真理教幹部死刑執行抗議声明

 
 オウム事件の死刑囚6名の死刑執行に対する抗議声明 日本脱カルト協会は、本日、元オウム真理教の土谷正実(東京拘置所)、遠 藤誠一(東京拘置所)、井上嘉浩(大阪拘置所)、新実智光(大阪拘置所)、中 川智正(広島拘置所)、早川紀代秀(福岡拘置所)の各死刑囚に対し、死刑が 執行されたことについて、遺憾の意を表し、法務大臣に対して抗議をすると共 に、残り6名のオウム事件の死刑囚(小池(旧姓林)泰男、豊田亨、端本悟、 広瀬健一、宮前(旧姓岡崎)一明、横山真人)については、決して死刑を執行 せず、恩赦により実質終身刑の無期懲役に減刑した上で、終生を贖罪とオウム 集団の活発化の阻止、同種事案の再発防止の礎とするよう強く要請する。
以 上

                                                                   2018年7月6日

                                                         日 本 脱 カ ル ト 協 会 代表理事 西 田 公 昭

法 務 大 臣 上 川 陽 子 殿

2018年7月7日土曜日


201877
オウム真理教幹部の死刑執行に抗議する

7月6日、上川法務大臣は「鏡を磨いて磨いて磨いて磨ききる気持ちで判断した」とオウム真理教幹部7人の死刑執行を行いました。
 オウム真理教の引き起こした事件の被害者やご家族の方々には心から同情いたします。テロは厳しく非難すべきですが、国家による殺人である死刑執行には強く反対します。死刑は非人道的、残酷で犯罪の抑止効果もありません。
 執行された7人のうち6人は再審請求中で、精神疾患を抱える者も含まれ、今、死刑を執行する必要がないのに執行した行為は国家の暴走です。曰く「平成のうちに」、曰く「天皇即位の前に」曰く「東京オリンピック・パラリンピックを前に」等々の理由は、法の正義の下の執行ではなく、明確な暴力的な国家の意志でしかありません。
 今回の死刑執行は、6人の再審請求中の状況を無視し、 憲法37条(公平な裁判を受ける権利)及び31条(適正手続の保障)に違反しています。また、精神疾患を抱えている1人には、刑事訴訟法479(「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する。」)を慎重に考慮する事もなく行われています。
 我が国ではこれまで、4人の無実の死刑囚が長い時間をかけた再審請求により、無罪を獲得しています。その4人目の島田事件の冤罪被害者である、赤堀政夫さんが無罪を勝ちとって29年になります。一方で、名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんは、再審請求中の2015年に89歳で無実の死刑囚のまま無念の死を遂げています。
 また、清水こがね味噌事件(袴田事件)の無実の死刑囚袴田巖さんは、4年前、再審開始決定により「耐え難いほどの正義に反する」と、確定死刑囚のまま身柄が釈放されました。477ヶ月の獄中生活のうち、1980年の死刑確定後は、「冤罪ながら死刑囚」として死刑執行の恐怖におびえる、残酷な日々を過ごしてきました。
 去る611日、東京高裁大島隆明裁判長は、静岡地裁村山裁判長による再審開始決定を取り消しました。しかし、袴田巖さんの拘置の停止の取り消しは行われず、今もなお死刑執行の恐怖を抱えた妄想による、自分の世界を築き上げた「確定死刑囚」のまま、「市民生活」を送りながら最高裁の判断を待つ事になりました。
 今回の死刑執行は、国家の暴力的な意志による「大量殺人」であり、「公開処刑」とも言える、執行予告など重大な人権侵害の何物でもなく、強く抗議し、死刑制度の廃止を求めます。

                               心の旅の会 会員 寺澤 暢紘