2018年11月5日月曜日

袴田巖さんの再収監を許すな 冤罪と再審を考える11・4集会資料


袴田巖さんの再収監を許すな
冤罪と再審を考える
         11・4 浜松集会
袴田巖さん・石川一雄さん・北川好伸さんは無実だ!

日時:11月4日(日)  後2時開会 
  会場:クリエート浜松 5階 53会議室 

1 開会あいさつ                      14:00
2 講演:虚偽自白の心理                  14:05
無実の人がなぜ虚偽の自白に落ちるようなことが起きるのか                
講師:浜田 寿美男 (奈良女子大名誉教授)             
3 アピール                        15:40
袴田 巖(予定)、袴田 ひで子、石川 一雄、北川 好伸
 4 連帯のあいさつ                     16:40
 5 集会アピール
 6 閉会                          17:00

主催:浜松 袴田巖さんを救う市民の会
協力:北川好伸さんを支える会、部落開放同盟静岡県連、NPOトータルケアセンター、キッチンガーデン「袴田さん支援クラブ」、人権平和 浜松、日本山妙法寺(市川隆子)
 《目 次》
  袴田巖さんの再収監を許すな 石川一雄さん、北川好伸さんの再審開始を・・・・  
大島決定批判(脛の傷に関して)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
    「すねの傷」に関する部分の記述(全文)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
それでも『すねの傷』はなかった!!
無知と偏見、あまりにもひどい大島決定の内容・・・・・・・・・・・・・・・ 4
    裁判所は検察の味方か?裁判官に良心はあるか?・・・・・・・・・・・・・・ 5
    違法な取調べでの自供は証拠にならない!・・・・・・・・・・・・・・・・・   
    2回の診察での重大な事実誤認は検察の意見書丸写しの矛盾・・・・・・・・・ 7
    記録にないから「なかった」んでしょう!・・・・・・・・・・・・・・・・・  
    最高裁は高裁決定の事実誤認を認め、直ちに再審開始を!・・・・・・・・・・ 8
狭山事件の第三次再審の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
    冤罪・狭山事件55年 年表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10     
天竜林業高校調査書改ざん収賄冤罪事件年表(再審請求即時抗告以降)・・・・・・・12
天竜林業高校調査書改ざん収賄冤罪事件
北川さんは無実だ!再審を開始せよ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
冤罪と再審を考える11.4浜松集会にご参集のみなさまへ・・・・・・・・・・・・・ 15

袴田巖さんの再収監を許すな
石川一雄さん、北川好伸さんの再審開始を
この夏76日から 26日までの短期間にオーム真理教幹部13人の死刑執行を命じた、当時の上川法務大臣は再審請求を行っているから執行しないという考え方は取っていない」と、死刑執行後の記者会見で発言しています。また、執行された13人の中には精神疾患を抱える死刑囚もいました。  
こうした状況はオーム真理教幹部の死刑執行の前から、すでに例外と言えなくなってきています。このことは再審請求中であり、妄想性障害を抱える状況の袴田さんに置き換えられます。それは袴田さんの命に直結することです。ますますもって一刻も早い再審開始決定を獲得しなければなりません。
 そして、6月11日の大島裁判長らによって袴田さんの再審開始決定は取り消さました。この不当決定は袴田さんだけの問題でなく、多くの再審請求中の冤罪被害者の皆さんに関わる、再審制度を含む司法制度の問題であることが浮き彫りになりました。
 袴田さんの場合は再審請求から38年が経過しています。事件から47年7ヶ月かかって再審開始決定を勝ち取りましたが、検察官による上訴(即時抗告)によって雪冤が遠のいています。そして、4年を超える時間をかけた大島不当決定は、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を踏みにじり、再審開始決定を取り消した結果、身柄の再収監の心配が増しています。
 これまでも、再審における検察官の上訴禁止や証拠開示手続きの明確化や、「疑わしきは被告人の利益に」の原則の徹底などが問題点としてあげられ、再審制度改革が求められてきています。
 また、袴田さんへの不当判決では、取調べ録音テープによって様々な警察の違法捜査が明らかになり、虚偽自白の真相が暴かれました。袴田さんは不当逮捕から連日の長時間の取調べ、拷問や誘導など「犯人は袴田に絶対間違いないということを強く袴田に印象づけることにつとめる」とする、違法者集団静岡県警の捜査方針によって犯人に仕立て上げられました。
 「無実の人が自白するはずがない」とよく言われます。袴田さんだけでなく、狭山事件の石川さんも、天竜林業高校調書改ざん事件で贈賄の罪で冤罪被害者にさせられた中谷元天竜市長も、警察によって虚偽自白をさせられてしまっています。
 私たちは再審制度の改革と合わせて、冤罪被害者を簡単に作り上げる警察、検察の取り調べの改革を進める事で、冤罪被害をなくし、再審の扉を広げた「司法の正義」実現のため取り組みを一層強めなければなりません。
 袴田さんに対して、最高検は最高裁への意見書で、特別抗告棄却決定を促し、その結果を受けての再収監の意図をむき出しにしています。こうした検察が狙う再収監をさせないため、あらゆる取組を強めなければなりません。検察は袴田巖さんの再収監をするな。
 そして、石川さんは事件発生から55年、北川さんは10年が経過しています。無実の石川さん、北川さんに、東京高裁は一刻も早い再審開始決定を。(浜松 袴田巖さんを救う市民の会 共同代表寺澤)

東京高裁大嶋不当決定批判
◆「すねの傷」に関する部分の記述(全文)
《P72下から2行目よりP74上から4行目まで》
なお、弁護人は、○○(専務)との格闘の際に向う脛を蹴られたとの自白に相応するように
事件後の昭和41年9月8日には袴田の右下腿前面に比較的新しい打撲擦過傷が認められ鉄紺色ズボンの右足前面のかぎ裂き様の損傷があった旨認定している所、同年7月4日に〇〇(山田医院)で受診した際の記録や同年8月18日に実施された身体検査の調書にも記載がなく、そのような傷は、逮捕時の袴田には右足すねの傷は存在せず、その後に生じたものであることが明らかになったとし、袴田の自白は事実に反するもので、このことは鉄紺色ズボンの損傷は、その自白に合わせて捏造されたものであることをうかがわせるという。
しかしながら傷の成因は別としても、袴田の右下腿部には本件発生日から打撲擦過傷痕があったこと自体は、確定審において袴田自身が一貫して認める供述をしているのであって、同年7月4日に医師の診療を受けた際や同年8月18日の逮捕直後の身体検査においては、袴田の申告や供述から容易にわかる顔部や腕部等にある傷であれば医師や係官が見逃すはずはないとはいえるものの、袴田を全裸にでもしない限りはズボンに隠れている場所の傷まで発見することは困難であって、診療の目的や逮捕直後の身体検査の所要時間等から見て、そこまで徹底した検査が行われたとは考え難く、所論のような根拠で、逮捕時の袴田の右すねに傷がなかったとは言えない。また、鉄紺色ズボンの損傷が蹴られた際に出来たものであるかのような控訴審判決の認定については、通常〇〇(専務)が裸足であればもちろん、仮に靴を履いていたとしても、〇〇(専務)に蹴られることによってカギ裂き様の損傷が損に生じるという可能性は低いことや、傷の形状とズボンの損傷の形状が必ずしも整合しているともいえないことから疑問がある。そうであるとしても、控訴審判決は、自白と鉄紺色ズボンの傷が適合する旨を補足的に述べたにとどまっている上、鉄紺色ズボンの損傷の成因は、家屋への進入の際や犯行の際の何らかのものとの衝突・擦過を始め種々のものが考えられるのであって、鉄紺色ズボンと本件の結びつきが否定されるものではない。また、仮に、捜査機関が鉄紺色ズボンを犯行着衣として捏造するのであれば、通常何かに引っ掛けた際に出来るカギ裂き様の損傷や成因が自白でも説明されていない損傷を数か所もズボンに作るなどということは考え難い。結局、弁護人の主張は採用できない。   線、太字は筆者)
それでも『すねの傷』はなかった!!
◇無知と偏見、あまりにもひどい大島決定の内容
私たち浜松袴田巌さんを救う市民の会は東京高裁の控訴審の段階で事件直後や逮捕時の記録の全てに『すねの傷』がないことを発見し、「冤罪の証拠その5すねの傷の真実」をホームページに載せ(1)DVDを作成し、『すねの傷』が逮捕後に出来たものであることを明らかにしてきました。6/11大島決定では123ページにのぼる全文で3分の1をDNAの不毛な科学論争に終始し、たった1ページと数行(上記)をこの問題に割き反論している。ぜひもう一度私たちの文章と見比べていただきたい。
8月18日の逮捕当日、3回の身体検査ですねの傷を発見できなかった言い訳は検察の意見書と全く同じです。しかしながら、この決定文がひどいのは検察の稚拙な弁解を擁護するだけでなく、検察すら言っていない「全裸にでもしない限り…発見は困難である」と言い切っている事です。裁判所が出す身体検査令状の意味を裁判所自ら否定するものです。わざわざ裁判所が許可して令状を出すのは、事件と関係する傷などを徹底的に調べるために、身体検査を行う必要があるからです。小学校の身体検査でさえ、パンツ1枚で行われるのが常識なのに、一家4人殺し、強盗放火事件である本件でズボンをはいたまま身体検査なるものを行ったなどとは到底考えられません。事実、事件発生と同じ昭和41年、選挙違反や駐車違反などで逮捕された女性が全裸にされ、陰部まで調べられ、それが人権問題になっているという資料(2)を私たちは確認しています。裁判官自身の無知とありえない空想による結論が「すねの傷はなかったとは言えない」であって、裁判官が自信を持ってすねの傷が「あった」といえないことは明らかです。大島裁判長、それでも袴田さんを死刑にしますか?
◇裁判所は検察の味方か?裁判官に良心はあるか?
さらに決定文は控訴審判決での「専務に蹴られたすねの傷」のくだりを矮小化して、補足的に述べているだけだと言っていますが、東京高裁の控訴審判決文はこう述べています。
「パジャマを着て犯行におよんだとする点等に明らかな虚偽があるが、この点については味噌タンク内の衣類が未発見であるのを幸いに被告人が捜査官の推測に便乗した形跡があり、これを根拠に調書全体の信用性を否定するのは相当ではない。専務との格闘の際に腿や向こう脛を蹴られたとの自供内容に相応するように事件後の9月8日には、被告人の右下腿中央から下部前面に4か所の比較的新しい打撲擦過傷が認められたうえ、事件後1年2か月経った頃発見された鉄紺色ズボンには右足前面に2,5cmx4cmの裏地に達するカギ裂きの損傷があった。」(1976年5月)
今回の高裁決定文の特徴は「…に疑問がある」と一見弁護団の主張を取り上げるふりをしながら「そうであるとしても」という形で40年という歳月を経るなかで新たな矛盾を積み上げてきた再審の流れをすべて否定して、40年前に時計を撒き戻すという全く許すことができないひどい内容です。無実の人を死刑にするかもしれないという真摯な態度のかけらもない軽薄な文章に怒りがこみ上げてきます。
中学生程度の国語力の持ち主ならば確定判決の「自供内容に相応するように」は「打撲擦過傷が認められたうえ」と「かぎ裂きの損傷があった」の両方に対等に掛かる文(並列)だということが理解できます。これのどこが「補足的に述べたにとどまっている」と言えるのでしょうか?公判で袴田さんと事件を結びつける証拠が何もなく、犯行着衣の訴因の異例の変更によって、供述調書の信用性、任意性が大きく揺らぐ中、唯一袴田さんの供述の信用性を裏付けるのがすねの傷であったのです。そして5点の衣類のズボンに残る傷はこの時できたものであるとすることが重要でした。決定文が言うように何かの途中で衝突,擦過したものであれば犯行着衣としては認定し難く、殺人と放火の現場の混乱する状況下で偶然すねの傷と同じ場所に、それを類推させるようなズボンの損傷が、全く関係ない移動中の事故によってできること自体あり得ないからです。確定判決文ではズボンの損傷がすねの傷に相応しているかのごとき表現をすることで、すねの傷との関連を印象付け、その結果鉄紺色ズボンが犯行着衣として認定され、袴田さんの自白が真実であるとされたのでした。この文脈から少なくとも5点の衣類が発見されて以降、50年近くズボンの損傷は専務との格闘の際に出来たものであるとの認識を弁護団も疑うことは有りませんでした。それなのに今回検察が言ってもいない他の場所で出来た可能性を、裁判官が検察の主張を正当化するために持ち出すことに驚きを禁じえません。それは検察の矛盾に助け舟を出すに等しいことです。検察と裁判所がグルになったらもうこれは裁判ではありません。この大島決定の性格は本田鑑定を否定することで他の矛盾に目をつむり、検察の主張を代弁するひどいものですが、すねの傷についても全く同様でお話になりません。
◇違法な取調べでの自供は証拠にならない!
裁判所も検察官同様、ことあるごとに「確定審において袴田自身が一貫して認める供述をしている」「自白でも説明されていない損傷」などと自らの主張の正当性のために自白をゆるぎない前提のように持ち出します。しかしながら、裁判官自身がこの決定文の中で逮捕後の異常な取調べを認め「自白の任意性、信用性に疑問」としている自白は、平均で1日12時間以上にも及び、トイレにも行かせないなど違法な取調べの結果引き出されたものでした。 
しかも45通のうち44通は自白に任意性がないといって取り上げられなかった支離滅裂なものでした。袴田さんを何としても殺人犯に仕立て上げようとする検察はともかく、検察の主張に合理的な疑いがないかを判断するべき裁判官が、信頼性のない自白をタテに論理展開をすることは自己矛盾で、絶対にしてはいけないことです。
本当に袴田さんは公判の過程ですねの傷を一貫して認めていたのでしょうか?
事件当夜6月30日に負傷して、警察官が初めてすねの傷の存在を知ったという9月6日は傷が出来てから68日後になります。一般に肉が露出するほどひどい擦過傷を負ったとしても、2か月以上経過すればかさぶたも取れ、ほとんど傷が判別できないくらいに回復します。事実、袴田巌さんは2017年7月13日に自宅近くの公園の10数段の階段から転倒して転げ落ち、顔面強打で腫れ上がり、下腿の擦過傷は肉が露出するほどひどく、救急車で浜松医療センターに入院することになりましたが、2週間ほどでほぼ完治しました。この時袴田さんは81歳、30歳の袴田さんならばもっと回復は速かったと推測されます。
事件後68日経っても存在していた傷は、逮捕時まで全く発見されなかったミステリーは不問にするとして、自白をした時点ではほぼ完治していたと思われます。傷を負った直後の痛みはそれなりに記憶にとどめることはできても、完治していく傷の存在を人はどこまで記憶にとどめることが出来るのでしょうか?9月6日に8,5cmあった傷が2日後には3,5cmに縮み、しかもすねの傷とズボンの損傷との関連が問題になるのは、1年2か月後、5点の衣類が発見されて以降です。袴田さんは自身の認識として、右手中指の傷と右肩の傷は消火作業の途中で負傷したと自覚しています。すねの傷に関しては上記のような理由で、記憶に不確かなまま、一連の行動の中で負傷したものと判断したとしてもおかしくはありません。公判の場で記憶にないものを答えようとして述べたことが「一貫して認めていた」とされたのです。さらに検察は供述調書を取り上げて「臨場感を持ってこれがその時の傷ですと袴田が証言した」といっていますが、排除された警察官による員面調書に証拠の価値は全くありません。自白にしても、開示された録音テープには調書を棒読みさせられる袴田さんの声は残っていますが、自白したという肝心の部分の録音はありません。結局、すねの傷に関しては自白以外の証拠はなく、違法な取調べの結果自白を強制されたもので、警察官の作文(9・6調書1961丁)を見せられても到底信用できません。
◇2回の診察での重大な事実誤認は検察の意見書丸写しの矛盾
大島決定には重大な事実誤認があります。すねの傷について、まともに検証することなく検察の意見書をそのまま書き写しただけの決定文は、『袴田の申告や供述から…』と7月4日及び8月18日に袴田さんが申告や供述をしたかのように言っていますが、事件とは無関係の袴田さんが逮捕前の診察で申告や供述をする理由がなく、そもそも7月4日の山田医院の診察は、前日に浜北の実家近くの福井医院で中指の治療をした袴田さんにとって不要なものでした。折しも7月4日は「容疑者に従業員H浮かぶ」と毎日新聞がスクープをした日です。清水に戻った袴田さんは同僚に強く勧められ、山田医院の診察を受けるのですが、そこに被害者の解剖をした警察医鈴木俊次がいて、「傷はすべて見た」と公判で証言し、カルテにも記載されましたがその中に「すねの傷」はありません。福井医院の診察では「ブリキのような鈍い刃物」という見立てが、山田医院の診察では「鋭利な刃物の可能性」になり、事件との関連を示唆する重要な証拠になるのです。この事実から鈴木医師は明らかに証拠になることを認識したうえで診察に臨んだといえます。それでも「すねの傷」は発見できなかった。そういう状況の下で申告云々は関係なく、一方的な診察であったわけで、そもそも検察が申告といったのは福井医院でのことを述べているのを、検察の文章を切り取った裁判官が申告という言葉を使って重大な事実誤認をしたのです。  
福井医院での診察は、いつものように週末に実家に帰った袴田さんが、消火作業の際負傷した中指の傷が化膿しかかっていたので受けたのですが、このことを検察は「袴田は中指の傷については申告したが、すねの傷は犯行と関係があることを恐れて申告しなかった」と袴田さんは嘘をつくずるい奴だと決めつけて、この申告という言葉を使っているのです。しかしながら、前述のように68日経ってもなお、変化しつつある傷は、事件から4日後の7月3日の時点では相当重傷であったはずで、指の傷の受診の際に同時に受けることが自然です。検察の言うように事件との関連でいえば、中指の傷こそ隠していたはずです。専務との取っ組み合いの最中に負ったという傷は、本当にくり小刀でできた傷ならば、犯人は一番隠したい傷のはずです。それに比べてすねの傷は、どっかで転んだとかどんな風にも説明はできます。それを検察の推理のように、中指だけ申告して、すねの傷は申告がなかったから診察しなかったというのはありえない話です。すねの傷を隠す必要があるならば、指の傷も自分
で治療するなどして隠していたはずだからです。
◇記録にないから「なかった」んでしょう!
これは愛媛県の獣医学部新設疑惑の記者会見に臨んだ加計学園加計孝太郎理事長の言葉です。この1年、メデイアを通してどれだけこの言葉を聞いたでしょうか?
「記憶にも記録にもない」というこの言葉は、真実を隠したい側が記憶はあやふやだが記録は確かだという意味を込めて使われています。そして真実を隠したい側には記録を捏造したり、消すことができることを私たちは目の当たりにしてきました。しかし、袴田さんを逮捕した当日、警察官には記録を消す理由は全くありません。50年近く「あった」とされてきた記録が「なかった」ことの意味は相当大きいものです。一審の裁判はその時点では完治していたすねの傷の検証は行わず、暗黙の了解のもとで「あった」として審理されてきたからです。もし、逮捕当日に警察の全ての記録にすねの傷がないことを一審の裁判官が知っていたら、石見裁判長と高井裁判官は無罪を主張した熊本典道裁判官の説得をはねのけ、それでも死刑を押通したでしょうか?東京高裁の横川裁判長も「自供内容に相応するように」(確定判決)すねの傷があったと自信を持って言えたでしょうか?もし、たった1通の供述調書が採用されなければ、事件当日「あった」ことも証明できない信頼性のないこんな証拠で、無実であるかもしれない容疑者を死刑にすることなど絶対にできなかったはずです。
◇最高裁は高裁決定の事実誤認を認め、直ちに再審開始を!
6月11日東京高裁大島裁判長は静岡地裁の再審開始決定を取り消し、再び袴田さんを死刑台に送ろうとする決定を下しました。この決定がいかにひどいものか、ここでは浜松袴田さんを救う市民の会が強く訴えてきた「すねの傷」に絞って検証しましたが、本田鑑定を否定することによって、検察の主張をそのまま代弁する独断と偏見の姿勢はすべての項目に一貫しています。たとえば5点の衣類の捏造の疑いに関しては、「自白(パジャマでの犯行)と矛盾する捏造を警察が行うとは考えにくい」と一方的に警察の側に立ち、ずさんな証拠の数々には「捜査機関が捏造するのであれば、もっとうまくやる」などと驚くべき屁理屈で
警察の不祥事の尻ぬぐいさえしています。
疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を無視し、数々の疑問にまともに答えようとしない高裁決定には重大な事実誤認があり、検察が「すねの傷」の確たる証拠を出せないこと、それだけで再審開始の要件を満たすものだと思います。
30歳で逮捕された袴田さんは82歳、弟の無実を信じ支え続けてきたお姉さんの秀子さんは85歳になります。残された時間は限られています。世界中の人々が袴田事件に注目し、歴史に残る裁判の行方は後世の批判にさらされることになります。
無実の人は無罪に!この当たり前の判決が司法自らの手で正されることを願ってやみません。                    
浜松 袴田巌さんを救う市民の会
     清水 一人
1現在、市民の会のホームページは「袴田支援クラブ」のホームページに移行しています。
*2警察庁刑事局発行(昭和41年11月)留置場管理関係資料による   
           狭山事件の第三次再審の現状

2018年8月30日、弁護団は、下山進・吉備国際大学名誉教授が作成した鑑定書「Mini-X非破壊分析装置によるインキ成分の元素分析」(下山第2鑑定)および同名誉教授作成の意見書(下山意見書)などの新証拠を提出した。第3次再審請求で弁護団が提出した新証拠は217点になった。下山第2鑑定は、蛍光(けいこう)X(エックス)線分析装置を使ってインクに含まれる元素を分析することで、証拠の万年筆が被害者のものではないことを客観的、科学的に明らかにした。
狭山事件の有罪判決(東京高裁・寺尾正二裁判長・19741031日)は、被害者の所持品である鞄、万年筆、腕時計が石川さんの自白通り発見されたとして、これを「秘密の暴露」と認定し、自白の信用性を担保し、石川さんが犯人であることを示す決定的証拠とした。とりわけ、この3つの物証の中でも、万年筆は請求人の自宅から発見されたという意味で有罪の重要証拠とされた。2016年8月に弁護団は下山第1鑑定を提出。下山第1鑑定は、事件当時、発見万年筆のインクや被害者が使用していたインク瓶のインクなどをペーパークロマトグラフィ検査によって検査した荏原秀介・科学警察研究所技官の鑑定を精査・検証し、発見万年筆には被害者が使用していたインクが入っていなかったことを指摘した。
その後、弁護団の証拠開示請求によって、事件当時、この発見万年筆で書いた数字が添付された調書が2016年10月に証拠開示された。また、パイロット社に問い合わせた結果、被害者が使用していた事件当時のジェットブルーというインクには、金属元素であるクロムが含まれていることも判明した。
弁護団は、これらの資料をもとに、発見万年筆で書かれた数字のインク、証拠開示された被害者が使用していたインク瓶のインク、被害者が事件当日に書いたペン習字浄書のインクなどについて、下山博士に蛍光X線分析による鑑定を依頼した。蛍光X線分析とは、物質にX線をあてると含まれる元素に固有のエネルギーの蛍光X線が発生することを利用して、物質に含まれる元素を分析するもの。下山博士は、Mini-XというX線発生器を使った非破壊分析装置を使って、検察庁で上記の証拠について蛍光X線分析をおこなった。その結果、被害者が使っていたインク瓶のインク、被害者が事件当日に書いたペン習字浄書の文字インクには、クロム元素が検出されたが、証拠の万年筆(発見万年筆)で書いた数字のインクからはクロム元素が検出されなかった。
下山第2鑑定では、クロム元素を含むジェットブルーインクが入っていた万年筆にブルーブラックインクを吸入して書いた文字のインクも検査し、クロム元素が検出されること、すなわち別インクを「補充」しても元のインクのクロム元素が検出されなくなることはないことも確認。以上の検査結果から、下山第2鑑定は、証拠の万年筆のインクからクロム元素が検出されなかったことは、ペン習字浄書のインクが含まれていないと考えられると結論づけた。この鑑定結果は、証拠の万年筆が被害者のものではないということを示している。狭山事件の有罪判決は、石川さんの家から発見された万年筆が被害者のものであることを前提として、自白通り発見されたことは自白が真実であることを示す「秘密の暴露」(犯人しか知らない万年筆の隠し場所が自白で判明した)であるとして、有罪の証拠としている。
下山第2鑑定は、証拠開示された「数字」やペン習字浄書のインクを蛍光X線分析という科学的方法によって分析し、証拠の万年筆が被害者のものではないことを客観的に明らかにした。下山第2鑑定によって、殺害後、被害者の万年筆を自宅に持ち帰ったという石川さんの自白がまったく虚偽であり、有罪証拠とされたものが事件と関係のないものであることが明らかになった。下山第2鑑定は、寺尾判決を根底から突き崩す決定的新証拠であり、東京高裁第4刑事部(後藤眞理子裁判長)は一日も早く再審を開始すべきだ。

当時の石川さんが非識字者で脅迫状を書けなかったことを明らかにした森鑑定(2016年12月提出)、コンピュータによる筆跡鑑定で99.9パーセント石川さんと脅迫状を書いた犯人は別人と指摘した福江報告書(2018年1月提出)が提出され、石川さんが脅迫状を書いた犯人ではないことが明らかになっている。
また、取調べ録音テープを分析した浜田寿美男・奈良女子大学名誉教授による供述心理学鑑定によって自白の虚偽と石川さんの無実が明らかになっている。
狭山事件の有罪判決はこれら新証拠によって完全に崩れている。

2018年9月14日、東京高裁で第37回三者協議がひらかれた。東京高裁第4刑事部の後藤眞理子裁判長と担当裁判官、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団からは、中山主任弁護人、中北事務局長をはじめ11人の弁護士が出席した。弁護団からは、今後、指紋関係や自白関係の新証拠などを提出することを伝えた。一方、検察官は、コンピュータによる筆跡鑑定(福江鑑定)について反論を近く提出する、スコップに関する元科捜研技官の平岡鑑定、下山第2鑑定に対しても、何らかの反論、反証を準備するとした。次回の三者協議は12月下旬に開かれる。
冤罪・狭山事件55年 年表
1963 5/1      女子高生Nさんが自転車で下校途中に不明になる。自転車と脅迫状が自宅にとど
けられる。(午後7時40分発見)
   5/2      深夜、脅迫状で指定された身代金受け渡し場所の「佐野屋」周辺に警察が張り込
む。犯人が現れたが逃走し、取り逃がす。
   5/4      Nさんの死体発見。警察庁長官辞表提出。
   5/11  スコップ発見。警察は死体を埋めるのに使われたものでI養豚場のものと発表。
   5/23     石川一雄さん(当時24歳)が別件で逮捕される。
第1回家宅捜索。(2時間17分、刑事12)
   6/17     石川さんを保釈直後に再逮捕。身柄を狭山署から川越署分室に移送。
   6/18     第2回家宅捜索(2時間8分、刑事14)
   6/20     石川さん自白をはじめる(3人共犯自白)
6/21     “被害者の鞄”が溝から「発見」。ゴム紐、教科書が発見された場所の間。
   6/23     石川さん単独犯行自白。
   6/26     第3回家宅捜索(24分、刑事3人)“被害者の万年筆”が台所の鴨居(カモイ)
から発見される。
7/9      石川さん、Nさん殺しで浦和地検に起訴される。
   9/4      第1審第1回公判(浦和地裁)。石川さん起訴事実を認める。
1964 3/11     第1審第12回公判。浦和地裁、石川さんに死刑判決を言い渡す。
9/10     第2審第1回公判(東京高裁)。石川さん、Nさん殺害を否認、無実を訴える。
1974 10/31    第2審東京高等裁判所(寺尾正二裁判長)無期懲役の判決を言い渡す。石川さん・
弁護団、最高裁判所へ即日上告。
1977    8/9     最高裁判所(第2小法廷)、口頭弁論もおこなわずに上告棄却の決定。
    8/30    石川さん・弁護団、東京高等裁判所へ再審請求。
9/6   石川一雄さん千葉刑務所へ移監。
1986    8/21    東京高等裁判所第4刑事部へ第2次再審請求
1994    12/21   石川さん仮出獄。31年7ヶ月ぶりに狭山にもどる。
1999    7/8     東京高裁第4刑事部(高木俊夫裁判長)が再審請求棄却決定。  
        11/30   狭山事件の再審を求める学者・文化人の会(現・狭山事件の再審を求める市民の
会)結成(代表に庭山英雄弁護士、事務局長に鎌田慧さん)
2002    1/23    東京高裁第5刑事部(高橋省吾裁判長)が異議申立棄却決定。  
2005    3/16    最高裁第1小法廷(島田仁郎裁判長)が特別抗告申立棄却決定
2006    5/23    東京高裁に第3次再審請求
2009    9/10    第1回三者協議開かれる。(門野博裁判長)10月末までに証拠開示についての
検察側の意見を提出するよう求める。
        12/16   第2回三者協議で東京高裁の門野博裁判長が検察官に8項目の証拠開示を勧告
2010    5/13    第3回三者協議。東京高検が36点の証拠開示。逮捕当日の石川さんの上申書、
取調べ録音テープなどが47年ぶりに開示される。 
2015    1/22    検察官が東京高検にある証拠物の一覧表を開示。
2016    8/22    弁護団が万年筆に関わる下山鑑定を提出。証拠の万年筆は被害者のものではない。
       12/28   筆跡・識字能力鑑定を提出
2017  12/22  東京高裁第4刑事部の裁判長が交代。後藤眞理子裁判長に。
2018  1/15  福江報告書(コンピュータによる筆跡鑑定で99.9%筆跡は別人)を提出
5/14  第36回三者協議
6/11  東京高裁第8刑事部(大島隆明裁判長)が袴田事件の即時抗告審で再審開始を取
り消し、再審を棄却する不当決定
7/10  弁護団がスコップに関する新証拠(元京都府警科捜研技官による平岡鑑定)を提出。
8/30  弁護団が下山第2鑑定(蛍光X線分析によるインク鑑定 証拠の万年筆は被害者
のものではないことを科学的に明らかに)を提出。新証拠は217点に。
   9/14  第37回三者協議。

天竜林業高校調書改ざん収賄冤罪事件年表(再審即時抗告以降)

2016年
1028
東京高裁に即時抗告申立
【即時抗告申立書】
 第1 原決定の根本的誤り      第2 加重収賄事件について
 第3 虚偽有印公文書作成事件(●●●●君事件)について
 第4 虚偽有印公文書作成・行使事件(●●●●君事件)について
 第5 結論に代えて
12 9
事実取調請求書(証人 浜田寿美男氏)を東京高裁に提出。
【事実取調請求書】
 第1 証人の表示
 第2 尋問事項
 第3 本証人について証人尋問を実施すべき理由
2017年
3 4
中谷良作氏の面談聴取。(於)浜松中央法律事務所
426
「東京集会」開催。
木谷明弁護士の意見書(2017413日付)を東京高裁に提出。
【意見書】
 弁第38号証
525
●●●●氏の電話聴取。
815
抗告審申立補充書(1)と証拠調べ請求書を提出。
【抗告審申立補充書(1)】
 第1 ●●氏の電話聴取について
 第2 今後の予定
【証拠調べ請求書】
 1 弁第39号証の1 ●●氏電話録音反訳書
 2 弁第39号証の2 上記電話録音のデータ
 3 弁第40号証 新聞記事(東京新聞)
 4 弁第41号証 新聞記事(中日新聞)
2018年
45
事実取調請求書(証人 ●●●●氏)を東京高裁に提出。
【事実取調請求書】
 1 証人の表示
 2 尋問事項
【証拠調べ請求書】
 1 弁第42号証 報告書(●●●●氏) ●●●●氏からの聴取状況等
 2 弁第43号証の1 面談反訳書 海渡双葉弁護士 ●●●●氏からの聴取状況等
 3 弁第43号証の2 上記面談録音のデータ
 4 弁第44号証 教育自治研究第30号「天竜林業高校の検討―確定判決・再  
審請求原決定について―」 名古屋大学名誉教授 榊達雄氏
518
抗告審申立補充書(2)と上申書を提出。
【抗告審申立補充書(2)】
 1 ●●君調査書改ざん事件について
 2 ●●教諭の証言は信用性を欠くことについて
 3 ●●教諭の証言は信用性を欠くことについて
 4 ●●教諭の証言は信用性を欠くことについて
【上申書】
検察庁からの意見書遅延の是正を求める上申。 

天竜林業高校調査書改ざん収賄冤罪事件
北川さんは無実だ!再審を開始せよ!2018114
1 事件とは
天竜林業高校3年生の大学推薦入試の調査書が改ざんされたという県教委宛の匿名通報が発端。該当生徒の級担任らの事情聴取に基づき、定年退職直後の元校長北川好伸さんが告発され、逮捕・起訴、裁判で有罪にされました。再審請求の争点は①調査書の評点を上げろと校長が指示したか否か。②該当生徒の祖父が賄賂を贈ったか否か。
2 静岡県警は贈収賄事件を捏造した
「10万円ずつ2回、中谷(該当生徒の祖父)は現金を贈ったに違いないし、北川は受け取ったに違いない」というのは、捜査官の作文です。北川さんは345日の長期勾留にもめげず、「問題の日に中谷さんに会っていないし、現金を断じて受け取っていない」と自白の拒絶を貫きました。片や、中谷さんは捜査官の誘導・強要に屈し、「贈った」と虚偽の自白をもぎ取られてしまいました。「やってなくても、やったと言わせるのは、赤子の手をひねるより簡単なことだ」と豪語するのは、県警の元刑事です。捜査陣は密室で虚構の筋書きを押し付け、家庭事情を調べ上げ、大声で怒鳴り、認めるまで釈放は無いと脅す例は、枚挙にいとまがありません。中谷さんも「家族と一緒に坂を転げ落ちてもいいのか」と脅迫されています。
3 調査書の改ざん指示は捜査官の唆し
残念ながら調査書は改ざんされ発行されました。その責任は当時の校長北川さんにもあります。しかし、級担任に「調査書の評点を上げるしかない」ように校長が指示したというのは虚偽です。退職間際の校長が勤務校に泥を塗るような違法行為を唆すことはあり得ないし、犯罪に手を付けるはずがありません。捜査官が、退職校長の責任に帰すよう若い教員を誘導した疑いが濃厚です。
4 公正に調べれば事実は明らか
 警察は天林高の全ての教職員から事情を聞いて調書を取っています。また、中谷さんの「自白」は供述調書に、否認するときは「捜査報告書」に、と使い分けし、再審審理までその実態を開示しませんでした。捜査の筋書きに有利・不利を問わず、総て公明正大に証拠を開示し、事実を丁寧に探るのが裁判です。間違った裁判は正さなければなりません。
5 静岡地裁浜松支部はまた手抜き裁判で棄却
地裁審理では弁護側が要求して実現した事実調べは中谷さんの尋問だけでした。北川さんに無実の罪を被せた事を詫びるという新証言でした。この新証言を供述分析のパイオニアである浜田寿美男さんが数ヶ月かけて「鑑定意見書」を作成し、提出しました。
 ところが、裁判所は「中谷新証言は信用できない。浜田鑑定の考え方も一つの考え方、参考意見に過ぎず、その証拠価値は限定的に捉えられるべきである。」として請求を棄却しました。思慮の浅い、軽薄な「決定」でした。
幸浦事件、二俣事件、の第一審と全く同じ空疎な手抜き裁判でした。北川さんと弁護団は即時抗告しています。
6 捜査も裁判も市民監視を 
 元裁判官の木谷明氏は高裁宛の意見書(昨年426日提出)で、「原決定の事実認定が私の常識を超えるものであることに驚き、これを確定させることはわが国の刑事裁判のあり方として不適切ではないか」と述べておられます。 警察・検察の捜査における権力行使は、密室で行われる故に監視が絶対必要です。裁判官には市民の常識が通用するよう私たちの声を裁判所に届けましょう。再審審理も市民が監視していることを裁判所に示しましょう。 
    すべての捜査資料を開示させるよう勧告せよ。② 証人調べを総て採用せよ。③ 速やかに三者協議を開始せよ。
以上3点を高裁へ要求しています。再審請求へのご理解と署名へのご協力を切にお願い申し上げます。
宛先 東京高等裁判所第12刑事部 合田 悦三 裁判長
      〒100-8933 東京都千代田区霞が関1-1-4  (文責  鈴木 昂)

~冤罪と再審を考える11.4浜松集会にご参集のみなさまへ~
 大崎事件弁護団事務局長の鴨志田です。本日の集会,さぞや熱く盛り上がっていることと拝察しております。今日は,再審・冤罪事件の弁護に携わる者として,遠く鹿児島から会場のみなさまに一言メッセージをお送りしたいと存じます。
 冤罪は,その人の人生を根こそぎ奪う「人生被害」をもたらします。そしてその加害者は国家権力です。
 捜査機関は圧倒的な権力を背景にあらゆる証拠を収集した後,自らが作り上げた犯行ストーリーに沿う証拠だけを法廷に提出します。また,本日ご登壇されている浜田寿美男先生がおっしゃる「証拠なき確信」に突き動かされるように,密室の中で彼らのターゲットとされた被疑者から自白を搾り取っていきます。
 大崎事件の原口アヤ子さんは,逮捕から今日まで一度も自白していません。客観的証拠もありません。でも,「共犯者」とされた,知的ハンデを持つ「供述弱者」である3人の男性の自白によって殺人犯の汚名を着せられました。
 無実を叫ぶアヤ子さんに対し,これまでに3つの裁判所が再審開始決定を出しましたが,91歳になる現在もなお,再審開始が確定していないのです。
 隠された無罪方向の証拠がなかなか開示されず,開示までに莫大な年月と労力を要するのも,再審開始決定に対して検察官が不服を申し立てることで再審無罪までの道のりが遠のいてしまうのも,そもそもこの国の再審に関する法が,無実の者を救済するという目的に適うものとなっていないところに根本的な原因があります。
 私は大崎事件の弁護人として,袴田事件,狭山事件,天竜林業高校事件をはじめ,全国で冤罪被害の救済のために闘っている弁護人と連帯し,冤罪被害者の一刻も早い救済を願うとともに,無実の者がもっと迅速に救済されるよう,再審に関する法制度を改正することを残りの人生に課せられた使命と心得て,日々活動していきたいと思っています。
 会場のみなさま,ぜひ,声を上げて下さい。お力をお貸し下さい。
 どうぞよろしくお願いいたします。
袴田巖さんに晴天白日の自由を!
事件から今年で52年が経過し、静岡地裁の死刑判決から50年。死刑確定から38年を迎えようとしています。
 東京高裁大嶋裁判長は、再審開始決定を取り消しましたが、「死刑の執行と拘置の停止の取り消し」はしませんでした。これは判決との矛盾です。再審開始決定を取り消した行為は、再び袴田巖さんに死刑宣告を行ったことに他なりません。「年齢、健康状況、生活状況から、逃走のおそれはなく、刑の執行が困難になるようことはない」と、いつでも死刑台に連れ戻すことを鮮明にしています。
さらに、最高検は「捜査機関によってねつ造された可能性は、特に根拠のない想像的、抽象的可能性の域にとどまっている」とし、「強盗殺人・放火等の重大な事件である事等からすれば、袴田巖の生活状況や心身の状況を考慮しても、拘置の必要性は高いというべきである」と、最高裁に特別抗告の棄却を促し、袴田巖さんの再収監を狙っています。
 毎日のように浜松の街に出かける袴田さんに、一刻も早い心の底からの自由を獲得しなければなりません。これまで以上に石川さん、北川さんなど、全国で冤罪を晴らそうと闘う人たちと連帯して頑張らなければなりません。(浜松 袴田巖さんを救う市民の会  共同代表 寺澤 暢紘)

   カンパ、署名のお願い   
 袴田さんの一刻も早い再審無罪を勝ち取るため多くの皆さんからの御支援、ご協力を引き続きお願
いします。また、街頭署名活動を毎月第2土曜日の2時から浜松駅前で行っています。
 ○ 郵便為替口座:記号番号00890-7-183799 浜松 袴田巖さんを救う市民の会 
○ ゆうちょ銀行 〇八九店 当座預金 0183799 名義人名は同じ
《浜松 袴田巖さんを救う市民の会》 
連絡先/〒430-0807 浜松市中区佐藤1-43-1-608 ℡090-9261-4840

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